よくある質問

よく寄せられるご質問をQ&A方式でまとめました。

和歌山研究林について

北海道にある国立大学の施設が、なぜ本州の和歌山県にあるのですか?

当時の庁舎前で撮影された集合写真(戦前頃)
当時の庁舎前で撮影された集合写真(戦前頃)

和歌山研究林は大正末期の1925年に創立されましたが、その当初の目的は、林業技術者や研究者を志す北海道大学の学生が、本州の山地で森林・林業について実践的に学べる環境を整備することでした。

数ある道府県の中で和歌山県が選ばれた理由は、用地確保の検討途上で当時の全国知事会に声をかけたところ、名乗りを上げたのが和歌山県だったことによります。用地の候補地は県内に3か所ありましたが、飛び地がないこと、地域の誘致活動が熱心だったこと等の事情から、最終的には平井集落で共同管理していた林地の一部を購入する形で創設に至ったようです。

 

なお、北海道に東京大学・京都大学・九州大学などの森林があるように、和歌山研究林の他にも大学の本部所在地から離れた場所に施設をもっている例は少なくありません。

昔は「和歌山地方演習林」などと呼ばれていましたが、なぜ「和歌山研究林」に改称されたのですか?

林内で新たに生えてくる稚樹を調査している様子
林内で新たに生えてくる稚樹を調査している様子

森林を利用した多様な専門分野の研究活動が行われる施設であることを表現するために「研究林」の名を冠しています。

現在の森林科学という学問分野はかつて「林学」と呼ばれ、人々が森林資源をどのように利用するかに重きをおいた、いわゆる「林業」の視点にたった教育・研究が多くの大学で行われていました。その実践、あるいは実証の場として提供されていた森林に「演習林」という名が付けられており、北海道大学が管理する森林も農学部の付属施設として、幾度かの細かな名称変更を経ながら長い期間にわたって「○○地方演習林」と呼ばれてきました。現在は農学部の付属施設から全学共同利用の施設に改組され、林学が属する農学の分野だけでなく理学・環境科学・医学・工学・人文学など、あらゆる分野の研究を広く受け入れる組織として活動しています。そうした活動をする場にふさわしい名前が必要となり、改組時の2002年に「演習林」から「研究林」へ改称するに至りました。

三角屋根が印象的な研究林庁舎はいつ建てられたものですか?

和歌山研究林庁舎(2018年)
和歌山研究林庁舎(2018年)

和歌山研究林が創立された2年後の1927年に建てられました。2013年3月には国の登録有形文化財に指定されており、外観や内装の大半は建設当時の雰囲気がよく残されています。

建物紹介のYoutube動画(2013年掲載)もありますので、あわせてご参照ください。

年平均気温、降水量、標高分布などの地理的な特徴を教えてください。

大森山保存林付近の急峻な地形の様子
大森山保存林付近の急峻な地形の様子

森林面積: 約4.5km2 (449ha)

年平均気温: 約15℃ (歴代最高気温38.9℃・歴代最低気温-6.1℃)

年間降水量の平年値: 約3,500mm (1991-2020平年値)

標高分布: 約240m(林内入口付近) - 842m(大森山山頂)  研究林庁舎は約190m

(※)一部の数値は 気象庁 古座川町西川のアメダス観測値 から引用

 

和歌山研究林は紀伊半島南部を流れる古座川流域の支流・平井川の最上流部に位置しています。

林内の地形は30度以上の急傾斜地が敷地全体の70%を占め、きわめて急峻です。

地質は 古第三紀牟婁層群 に属し、砂岩、あるいは砂岩・泥岩互層により形成されています。
森林土壌は基本的に薄く、林内の大半が適潤性、急峻な尾根筋には乾性の褐色土壌が分布しています。

林内の植生にはどのような特徴がありますか?

大森山保存林
大森山保存林

森林敷地約4.5km2のうち約4分の3の面積がスギ・ヒノキなどが植栽された造林地で、残り約4分の1の面積がおもにシイ・カシ類が優占する照葉樹が主体の天然林です。また、少なくとも100年近くの間は人の手による大きな攪乱を受けていない天然林が60haほど広がっており、保存林として管理されています。その植生のほとんどはシイ・カシ類と落葉樹が混ざり合う広葉樹ですが、小規模ながら天然のスギやヒノキ、コウヤマキの純林も残されています。

業務内容について

林内ではどのような研究・教育活動がおこなわれていますか?

研究林を利用した実習を行っている様子
研究林を利用した実習を行っている様子

研究活動については、おもに生態学に関連する基礎研究がさかんに行われています。研究テーマは利用されている研究者によって様々です。また同時に、こうした個別の研究に依存しない森林生態系の動態を追うための基礎データの蓄積も続けられており、野生動物の個体群や森林植生を把握するためのモニタリングが長期にわたって行われています。

教育活動については、おもに森林を利用した野外調査やワークショップ、体験学習などを中心としたアクティブラーニングの形態をとった実習プログラムを多く受け入れています。参加対象は目的や実施内容によって様々で、大学生はもちろん、小学生から一般の方まで幅広く応じています。

森林圏ステーションのWebサイトと、和歌山研究林を紹介しているYoutube動画(2013年掲載)も併せてご参照ください。

山奥の僻地にある施設ですが、年間で何件くらいの利用があるのでしょうか?

利用件数は毎年大きく上下するので一概に申し上げることが難しいですが、利用者の延べ人数は毎年1,500~2,000名前後で推移しています。交通の便が悪く災害も多い紀伊半島の内陸部の僻地といえる立地ですが、今後さらなる利用を増やしていきたいと考えています。

スタッフ構成と、各スタッフが日々どのような業務に携わっているのか教えてください。一般的な大学の研究室と異なる、という話は聞いていますが…。

2019年現在は林長1名、研究員1名、技術スタッフ9名、事務や施設維持のスタッフ3名が所属しています。このうち研究者は林長と研究員の2名になります。技術スタッフは論文執筆などの特に専門性の高いものを除いたあらゆる業務を、事務や施設維持のスタッフは事務作業・建物の清掃・賄い業務などをおもに担っています。

また大学院教育を行う組織に所属していることから、長期滞在の学生が若干名おります。

 

世間一般でイメージされる大学の研究室とは違い、教員・研究者・学生の数と比べて他のスタッフの割合が大きい人員構成に見えるかもしれません。その理由は研究・教育にかかわる業務のほかに広大な森林フィールドや多くの施設・建物を維持する業務がある、という事情によります。また大学本部から遠く離れた立地であるため、会計や労務管理といった事務仕事の大半も和歌山研究林内で処理しなければなりません。多くの人員でかなりの余裕をもって業務をこなしているように見られがちですが、実際は更なる人手が欲しくなる状況に直面することも多いです。このため、職種の垣根を超えたチームワークであらゆる課題解決に取り組んでいます。

伐採や丸太生産など、昔ながらの大学演習林から連想される林内作業は現在も行われていますか?

林道などのインフラ整備は森林管理や教育・研究活動の根幹をなす最も重要な部分のひとつなので、現在も積極的な維持が続けられています。また山仕事として最もイメージしやすい伐採や植栽作業などについても、ごく小規模ながら現在も続けられています。

利用について

研究林庁舎の見学は可能ですか?

はい、可能です。庁舎外観の見学につきましては、いつでもお越しください。

庁舎内部も特に予約なしでご覧いただくことが可能ですが、研究林スタッフが控えている平日の9:00~16:40頃にお越しください。手すきの時間であれば、簡単なガイドもさせていただきます。

学生・生徒や一般市民のグループで森林科学に関連する実習や見学会などを行いたいのですが、どのような手続きを行えばよろしいですか?

研究林スタッフと事前打ち合わせのうえ1~2通の書類を提出していただく必要がありますが、詳細につきましてはご利用方法のページをご覧ください。

基本的に教育・研究に関連する活動であれば、可能な限りご利用の受け入れを行いたいたいと考えております

ただしご利用に際しては、無断での草木等の採集の禁止・林内全域における火気や昆虫採集の厳禁など、きわめて常識的な一定のルールをお守りいただく必要がありますのでご注意ください。

実習や見学会などは土・日・祝日でも実施できますか?

休日も可能な限り対応する方針とさせていただいておりますが、他の業務スケジュールやスタッフ確保にともなう各種の調整が必要となります。このため、遅くとも実施の2か月~1.5が月前頃までには実施に関する最初のご相談をお願い致します。

研究林内を案内していただくことは可能ですか?

林内の案内の有無につきましては、個別にご相談いただいたうえで判断致しております。

これまでの傾向としましては、人員確保や安全管理の都合上、個人での見学では研究林スタッフによるご案内をお断りしている場合が多いですが、団体様の場合はできるだけ対応させていただく方向で検討しております。

 

泊まり込みで調査や実習等の実施を検討しています。宿泊や食事を作るためのスペースはありますか?

庁舎2Fにある14人部屋
庁舎2Fにある14人部屋

はい、最大で30名程度の人数が滞在できる宿泊部屋が6部屋あります。このうち2部屋は長期滞在者向けの部屋となっており、専用の自炊設備が付いています。

風呂場とシャワー室も用意しておりますので、ご利用ください。

北方生物圏フィールド科学センターのWebサイトも併せてご覧ください(自炊設備付きの部屋の解説はありません)。

 

鉄道の最寄り駅などから研究林庁舎までの送迎は行っていますか?

調査・研究にかかわるご利用の場合のみ、おもにJR古座駅・JR串本駅・JR周参見駅・白浜空港からの送迎を行っております(人員確保などの都合上、一般の見学者につきましては実施しておりません)。

送迎をご希望の際は、一度ご相談ください。

自家用車での入林は可能ですか?

自動車による通行が可能な研究林内の道路は一般の公道や林道と異なり、落石や陥没・悪路区間が大変多く、普通の自家用車による通行には大きな危険が伴います。

このため安全面を考慮し、和歌山研究林で許可を受けた車両以外は入林を認めていません。

食事の提供は可能ですか?

可能ですが、土日祝日や賄いスタッフが不在の日など、提供が難しい日もあります。一度ご相談ください。

利用の際の宿泊費、食費を教えてください。

ご利用方法、または北方生物圏フィールド科学センターのWebサイトをご覧ください。

(予告なく改定される場合がありますのでご了承ください)

研究林庁舎の近くにコンビニやスーパーはありますか?

研究林庁舎のある古座川町平井地区にはコンビニやスーパーがなく、自動販売機が数台あるのみです。

自炊のための食料品や酒類・常備薬等につきましては、事前に串本町内などの市街地で購入して持ち込む必要がありますのでご注意ください。

研究林庁舎、研究林内では携帯電話は使用できますか?

研究林庁舎の周辺は大手3社(ドコモ・au・ソフトバンク)の電波が使用できます。

研究林内では標高が高く見晴らしのよい尾根上以外では圏外となり使用することができません。

 

喫煙は可能ですか?

研究林庁舎内、庁舎周辺の敷地内、研究林内ともに全て禁煙です。

和歌山研究林の敷地外に喫煙可能な場所がありますので、来林時に別途ご案内致します。

林内のモノレールに乗車することはできますか?

林内に4路線あるモノレール路線のひとつ
林内に4路線あるモノレール路線のひとつ

はい、ご利用に関しまして一度ご相談いただけましたら、ご乗車いただけるようスケジュールを調整することも可能です。

生産物などの販売について

研究林の木を伐採して丸太を生産しているとのことですが、生産された丸太を購入することはできますか?

はい、個人・法人問わず購入可能です。契約や運搬、料金のお支払等に関する調整が必要となりますので、詳細につきましては一度ご相談ください。

丸太の生産のほかに木工品・工芸品も製作している、という話を耳にします。どうすれば購入できますか?

工芸品の制作風景
工芸品の制作風景

フィールドに出られない雨天時などで通常業務の合間を利用しながら、木工品・工芸品を製作しています。

製作されたものは、おもに 道の駅 一枚岩 Camp&Food monolith北大札幌キャンパス正門奥の"カフェdeごはん"に併設の北海道大学オリジナルショップ、和歌山研究林庁舎の3か所にて通年販売しております。このほか、公開イベントや地元のお祭りなどで出店している場合もあります。

※作業のペースに限界があるため、ネット通販を行う予定はありません。

製作されている木工品・工芸品の材料はどこから調達していますか?

材料のほぼ全てが和歌山研究林に生えていた木や台風などの倒木から切り出された木材ですが、まれに北海道内の他の研究林から切り出された木材を使用することもあります。

木工品・工芸品のオーダーメイドは受け付けていますか?

他の業務の合間に製作するため少しお時間をいただく場合がありますが、対応が可能な範囲で受け付けております。単発のイベント等向けに、一度にまとまった量の製作を承ることも可能です。

個別のオーダーメイド品は、これまでに升酒用のマス・登山などで使用する杖・動物調査用の巣箱・1枚板の座卓などを製作しております。

とりわけ大型のもの・構造が複雑なものでなければ、木製品であれば基本的にどのような製作のオーダーも承っております。もしご興味がありました際は、一度ご連絡いただけましたら幸いです。

暖房用などで使う薪材を購入したいのですが、生産していますか?

広葉樹の薪材サンプル(約1立米ぶん)
広葉樹の薪材サンプル(約1立米ぶん)

はい。和歌山研究林内の一部で薪ストーブを使用しているため、一定量の薪材を常にストックしています。スギとヒノキの材をまとめた針葉樹薪と、おもにシイ・カシをはじめとした多種の雑木をまとめた広葉樹薪の2種類を、1束単位・または1立米単位で用意しておりますので、ご購入方法など詳細については一度ご相談ください。